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~実は、革ってサステナブル。~

多くの方が日常で使用する革靴や革鞄、革財布などの革製品は、畜産や食肉加工の副産物として得られる皮を利用しており、革製品のためにわざわざ動物を犠牲にすることはありません。革が好きな私自身、このことを知ったのは皮革業界に勤めてからのことでした。私と同じように、革が好きでも皮革がエコでサステナブルな素材だと知らない方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、TLA(Thinking Leather Action)が発行する「実は、革ってサステナブル。」というリーフレットの内容を踏まえて皆さんにエコ、サステナブルという観点での革の良さを伝えられたらと思います。


TLA(Thinking Leather Action)とは

TLAは、※一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)が2021年に設立したワーキンググループです。サステナビリティに対する関心が高まる中、TLAは革が環境に優しく、長く使える優れた素材であることを伝える活動を開始しています。2023年2月から3月にかけて、皮革・革製品関連企業向けの説明会が開催され、3月にはTLAの理念を記したリーフレットが発行されました。
※一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)1986年に設立された皮革および皮革製品に係る総合団体。生産、流通、貿易に関わる各種施策の総合調整、技術開発、普及啓発を行い、皮革産業の全体的な振興と発展、さらには連携強化を目指しています。現在、24の皮革関連団体が会員として参加しています。


エコ、サステナブル、SDGsなどのワードをよく聞くようになった昨今、環境問題への関心は非常に高まっています。一方で皮革に対してネガティブな誤解を持っている方はまだまだ多いのが現状です。ここからは、皮革に対する4つの誤解に基づいてお話ししていきます。




皮革に対する4つの誤解
①皮革/革製品のために動物を殺しているという誤解



革製品は、食肉用などの動物からお肉をいただくときに出る皮を活用してつくられています。なので、動物の命を革製品のためだけにいただくということはありません。食肉文化が続く限り、動物に感謝の想いを込めて、命の一部である皮を無駄なく革製品として活用していく。これは、ずっと昔から続くエコでサステナブルな活動であり、この先も続けていくことが、私たちの使命であると考えています。

②革製品をつくるのをやめれば、畜産でのCO²が減るという誤解



革製品を使うのをやめたとしても、皮は畜産から出続けます。例えば牛の皮。その量はなんと、日本だけでも1年間に約100万頭分(2021年)。もし活用しないとなると、ハンドバッグにして769万個分、革靴にして2,500万足分の皮を無駄に廃棄・焼却することになり、相当な二酸化炭素が排出されます。また、これまで革でつくっていた商品を別の素材でつくることになれば、さらなる二酸化炭素の排出につながる可能性すらあります。皮を、革製品として活用することは、脱炭素につながる、エコでサステナブルなサイクルなんです。

③皮革は石油素材などに比べ環境負荷が大きいという誤解



家畜として育てられている牛や豚。その体の大部分は、お肉として私たちの食卓に届けられます。そして、皮をはじめとした動物のさまざまな部位は、化粧品や医療、油脂、コラーゲン、ゼラチン、肥料など、すべて余すことなく活用されています。

④革の代替素材(ヴィーガンレザーなど)は、皮革よりサステナブルであるという誤解



安価で見た目がいいモノも増えてきていますが、その中には長持ちしないモノも多く存在します。短いスパンで買い替えていくと、モノをつくるときと捨てるときに、地球環境への負荷がかかります。一方で、革製品は丈夫で長持ち。革は、長い目で見ると、地球にやさしくて、とってもエコな素材なんです。




いかがでしたでしょうか。
皮革が食肉の副産物からつくられているということは消費者の約38%(※)にしか知られておらず、誤解をしたまま購入しないという選択をされている方も多いのかもしれません。今回のコラムでお話しさせていただいたように皮革はエコで、サステナブルな素材です。また、革の生産に使われる水の消費量削減が進んでいたり、環境への影響を軽減する取り組みも進められています。
※(一社)日本皮革産業連合会 生活意識調査2022
TLA(Thinking Leather Action)の公式サイトではより詳しく説明されているので、気になる方はこちらからご覧ください。→TLA(Thinking Leather Action)公式サイト


それではまた、次回の投稿で。


※タンナー・山陽は食肉の副産物の原皮だけを材料に、LWG(Leather Working Group)認証を基に生産した、持続可能な天然皮革を使用しています。LWG(Leather Woking Group)について

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